「おべんと下げてどちらへ?」 「ちょっとそこまで」
という 台詞が いたくお気に入りな彼。
ああいうところで子育てがしたいね〜 なんて話す。
今くらい こういう話しててもいいのよ。
むしろ今でさえできないのだったら
きっと駄目だと思う。
案の定 予想通りの反応で
羨ましい?あらそう?ごめんあそばせ☆
・・・なんて 云ってしまいたくもなる人もいる。
私の二人目のピアノの先生というのが
中年の独身・一人暮らし・女。 で
その住んでいる家というのも
昼なお暗し・・・と言わんばかりの古めかしい家で
陰気で常に一定の湿度と冷気が蔓延しているような
そんな雰囲気の中で鍵盤をたたき
指揮棒で指をつつかれしていたわけなのだけれど
そこへ通うたびに こう なんだか不幸が移る気がして
その何ともいえない 閉塞感や疎外感の漂う空間に注意力散漫で
よって 上達もしなかった。
意を決してやめてから どういうわけだか その先生が
音大時代に恋愛をし そして 結婚まで考えていたけれど
結局 ご両親の反対によって結ばれる事なく
それから 結婚せずにああいう暮らしをしていたのだという話を耳にし
それで なんだか納得したのだった。
あの家の醸し出す独特な臭気と 先生の持つ淫靡の見え隠れするような陰湿さに。
その先生を 最近思い出していた。
というのも
私と彼の事の顛末とこれからの話しを聞きたがる
(随分)年上の同性独身コースメイトと接していると
あの家の玄関の前で 立ち止まり そして 一呼吸おいてドアを開ける
あの何とも言えない 自分の中での嫌悪感を思い出すから。
ある種の女性の持つ 独特な雰囲気というのを
小さな頃から敏感に嗅ぎ付けていた そんな私は
のらりくらりとはぐらかす。
私がこんななら 彼。ということなのか
彼が 彼女たちに囲まれているのを目撃すると
なんとも云えない気分になってしまう。
本当に 私も大概性悪だわ
コメント